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鼻血がでる、鼻から膿がでる、目の下に穴があく-口腔鼻腔瘻・外歯瘻について

浜松市中央区にあるけんご動物クリニックです。

今回は鼻血がでる、鼻から膿がでる、目の下に穴があく-口腔鼻腔瘻・外歯瘻についてご説明させていただきます。

高齢のワンちゃんで「鼻から膿のような鼻水が出ている」「鼻血がでている」「目の下に穴があいて膿が出ている」といった症状が見られることがあります。これは、重度の歯周病から引き起こされる合併症である可能性があります。

このような症状には、口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)、外歯瘻(がいしろう)の病名があてはまります。

  • 口腔鼻腔瘻:上顎の歯(特に犬歯や第4前臼歯)から鼻腔に穴が貫通してしまう状態。口から鼻腔の炎症に波及し、膿性鼻汁や鼻血が出てきます。
  • 外歯瘻:歯の根の周囲の炎症が進行し、皮膚の外にトンネルのような穴(瘻管)ができ、そこから膿が出る状態です。よく目の下に穴が開くことで気づかれます。

いずれも歯周病や根尖周囲病巣(歯の根の周囲に膿がたまる病気)が原因となることが多く、放置すると痛みや皮膚や鼻から出血するだけでなく、全身的な感染症にもつながる可能性があります。

また、放置すれば進行し、顔面や鼻腔、眼の周囲の構造に大きな影響を与える重大な疾患です。

犬の口腔鼻腔瘻・外歯瘻の症状

これらの病気が疑われる時、飼い主様が最初に気づく症状は次のようなものです。

  • 片側の鼻から膿や血が混じった鼻水が出ている(慢性的な鼻炎)
  • 食事中にくしゃみや鼻水を繰り返す、鼻血が止まらない
  • 鼻からくさい液が出ている
  • ドライフードを痛がって食べない
  • 目の下が腫れている
  • 目の下から膿が出て穴が開いている
  • 口や歯を気にして前あしで触る、よだれが増えた
  • 口臭が強くなった
  • 食欲が落ちている、痛がって食べない

とくに**「片方だけ鼻水や血が出る」**という症状は、口腔鼻腔瘻の典型的なサインです。重症になると鼻腔から膿が持続的に流れ出し、慢性鼻炎のような状態が続きます。

このような症状が見られた場合には、早期に動物病院の診察を受けることが重要です。

犬の口腔鼻腔瘻・外歯瘻の原因

これらの疾患のもっとも大きな原因は歯周病の進行です。

歯周病は、歯垢や歯石に含まれる細菌が歯茎に炎症を起こし、やがて歯の根元や骨を破壊していく病気です。

特に以下のような条件がリスクを高めます。

  • 子犬の頃から歯磨き習慣がない
  • 口腔ケア製品を使っていない
  • 定期的な歯石除去処置を受けていない
  • 高齢犬(10歳以上)
  • 小型犬種(歯と歯の隙間が狭く汚れがたまりやすい)

犬の上顎犬歯や第4前臼歯は鼻腔や皮膚に近いため、歯周病が進行すると鼻腔や顔面に容易に波及してしまいます。波及した歯周病が特に中・高齢になって症状をあらわします。

犬の口腔鼻腔瘻・外歯瘻の診断

診断は外見上から判断がほぼできますが、必要に応じて以下の検査を行います。

  • 口腔内の視診・触診
     歯肉の腫れや膿の排出孔(瘻管)を確認します。
  • レントゲン検査
     歯の根の周囲の骨の吸収や膿のたまりを確認します。
  • 歯科用レントゲン(デンタルレントゲン)
     通常のレントゲンよりも詳細に歯の状態を確認でき、根尖病巣の有無や広がりを判断します。
  • プロービング検査
     専用の器具を使って、歯周ポケットの深さや口腔と鼻腔の貫通を確認します。

犬の口腔鼻腔瘻・外歯瘻の治療

根本的な治療は、原因となっている歯の抜歯と瘻管の閉鎖手術です。

外科的治療

  • 抜歯
     病巣の原因となっている歯(犬歯、第4前臼歯など)を抜去します。
  • 瘻管閉鎖手術
     口腔鼻腔瘻や外歯瘻がある場合、周囲の健康な歯肉を用いて閉鎖します。

全身麻酔が必要ですが、再発を防ぐためには避けられない治療です。

ただ、高齢犬での全身麻酔になりますので麻酔リスクがあります。

内科的対症療法(根治は困難)

高齢で麻酔が難しい場合には以下の方法を組み合わせて一時的な緩和を図ります。

  • 抗生物質の投与
  • 消炎鎮痛薬の投与
  • 止血剤の投与
  • 鼻腔洗浄
  • 歯磨きや抗菌デンタルジェルなどの使用

ただし、内科的治療は一時的な症状の緩和が目的であり、根本的な解決にはなりません。再発を繰り返す可能性、耐性菌ができ抗生剤が効かなくなる可能性があります。また、病状は時間とともに悪化していく可能性もあります。

飼い主様へ ~早めの予防と対策を~

これらの疾患は、若いうちからの歯のケアを怠った結果として高齢になってから現れることが多いです。

  • 小さい頃からの歯磨き習慣
  • 小さいころからの口腔ケア
  • 定期的な歯石除去

これらを習慣化することで、重度の歯周病やその合併症を予防することが可能です。

まとめ

犬の口腔鼻腔瘻・外歯瘻は、放置すると重大な症状につながる歯周病の合併症です。鼻血や膿、顔の腫れなどの症状がある場合はすぐにご相談ください。

けんご動物クリニックでは、口腔鼻腔瘻・外歯瘻の治療を行っておりますのでお悩みの場合は一度ご相談ください。

また、当院ホームページ内の歯科軟部外科・整形外科もあわせてご覧ください。

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