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犬のしこり・できもの
浜松市中央区にあるけんご動物クリニックです。
今回は犬のしこり・できものについてご説明させていただきます。
犬をなでているときに「ん?なんかコリコリする…」と気づく「しこり」。
飼い主様にとっては「これって病気?」と心配になることもあるでしょう。
体表部分の「しこり」では犬で約70種類ほどあり、猫でも約50種類ほどありますので、そのため見た目だけで正確に診断するのは難しく、誤りが生じる可能性があります。
犬のしこりとは
犬のしこりとは、皮膚や皮下組織、筋肉、内臓などにできる「異常なふくらみ」や「塊」のことを指します。
医学的には「腫瘤(しゅりゅう)」や「腫瘍(しゅよう)」とも呼ばれます。
しこりには、「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」と「非腫瘍」があります。
たとえば、脂肪種など良性のもの、肥満細胞腫など悪性のもの、表皮嚢胞など非腫瘍のものもあります。
見た目や触り心地だけで良性・悪性を見分けることはできないため、動物病院での診察が必要です。
犬のしこりの症状
犬のしこりは、初期の段階では無症状のことが多いですが、以下のような症状に注意が必要です。
● しこりの大きさや形状
- 大きさは米粒大からピンポン玉大まで様々
- 表面がなめらかなものもあれば、ゴツゴツしているものもある
- 硬いもの、柔らかいもの、動くもの、皮膚に固定されたものもある
● しこり周囲の変化
- 赤みや腫れ
- 出血や膿(うみ)が出ている
- 犬が舐めたり噛んだりして気にしている
● 全身症状
- 食欲低下
- 元気がない
- 痩せてきた など
特に急激に大きくなっていくしこりには注意が必要です。
犬のしこりの種類
犬のしこりは「体表部分のしこり」だけでも約70種類ほどあり多いですが、主に以下のようなものがあります。
● 良性腫瘍
- 脂肪腫(しぼうしゅ):皮膚の下にできる柔らかくてよく動くしこり
- 皮脂腺腫(ひしせんしゅ):皮脂腺由来のしこりで、顔や首に多くみられます
- 乳頭腫:ウイルス由来のイボ状のしこり
● 悪性腫瘍
- 肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ):皮膚にできる代表的な悪性腫瘍
- 乳腺腫瘍:特に避妊していないメス犬に多くみられる腫瘍で乳腺腫瘍の約3割にみられる
- 軟部組織肉腫:皮膚の奥深くにでき、広がりやすい腫瘍
● 非腫瘍
- 膿瘍(のうよう):細菌感染などによる化膿性のしこり
- 皮脂腺過形成 :皮脂を出す皮脂腺が大きくなって盛り上がったもの
- 表皮嚢胞:皮膚の下にできる袋状のしこりで角質がたまっているもの
■ 犬のしこりの診断
しこりの診断には、以下のような検査が行われます。
● 視診・触診
- 大きさ、形、硬さ、色、可動性(動くかどうか)を確認
● 病理組織検査
- 確定診断するのに必要
- 局所麻酔をして小さいしこり全体を切りとって調べる
- 局所麻酔をして大きいしこりに針を刺して組織を切りとって調べる
- 全身麻酔をして組織全体を切りとって調べる
● 画像診断
- レントゲン検査、超音波検査など
- 転移や他の臓器への影響を評価する場合に実施
診断結果によって、良性か悪性か、切除が必要かどうかを判断します。
犬のしこりの治療
しこりの治療法は、原因や種類によって異なります。
● 経過観察
- 良性、非腫瘍で小さく変化がないものは、飼い主さんの希望により定期的な診察で経過を見守ることもありますが、一部を除いて、経過観察してもしこりが消えることはありません。
● 外科的切除
- 病理検査(確定診断)した上で治療法は外科的治療になることがほとんどです
- 良性・悪性・非腫瘍にかかわらず、しこりの性質が不明な場合や増大・炎症がある場合、気になる場合は切除が推奨されます
- 悪性の場合は、周囲の組織ごと広めに切除します
● 抗がん剤・放射線治療
- 悪性リンパ腫や肥満細胞腫や肉腫などの悪性腫瘍に対して効果的な場合に使用されます
● 内科的治療
- 抗生物質やステロイドで治療できる炎症性のしこりもあります。
● 凍結療法
- 液体窒素などで組織を壊死させて除去する麻酔を行わない治療法です
- 飼い主さんが手術を望まない場合の一つの選択肢です
- 基本的に良性の小さな表在性病変に適します
- 皮膚乳頭腫(パピローマ)、脂漏性角化症(老犬性いぼ)、繊維腫、毛包腫などに効果的です
● 半導体レーザー
- 熱による蒸散・切除・凝固という手技により治療を行います
- 小さな腫瘍なら局所麻酔での処置が可能です
- 広い腫瘍は全身麻酔が必要ですが、術後の痛みや腫れが少ないです
- 高齢犬で全身麻酔が避けられる場合があります
- 良性皮膚腫瘍(繊維腫、皮脂腺腫、乳頭腫など)、口腔内の歯肉増生やエプーリス、眼瞼腫瘤、耳介の腫瘤などに効果的です
しこりの種類によって治療効果が異なるため、正確な診断と早期の対応が非常に重要です。
まとめ
犬のしこりは、見た目や触った感触だけでは良性か悪性か非腫瘍かを見分けるのが困難です。
「様子を見ていたら大きくなっていた」「もっと早く診せればよかった」というケースも少なくはありません。
特に、急に大きくなるしこりや、出血・炎症を伴う場合は動物病院を受診しましょう。
けんご動物クリニックでは、犬のしこりの診断および治療を行っております。しこりに気づいた際はお気軽にご相談ください。
また、当院ホームページ内の、腫瘍科、軟部外科・整形外科もあわせてご覧ください。

