ブログ

Staff

 猫のマダニ感染症

マダニは、猫にとって非常に危険な寄生虫です。代表的なものに「ヘモバルトネラ症」や「バベシア症」、また人獣共通感染症である「ライム病」などがあります。特に近年注目されているのが、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS:Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)」というウイルス感染症です。

今回はSFTSについてお伝えします。

SFTSウイルスは、主にマダニに咬まれることで感染しますが、猫自身が感染して発症するだけでなく、猫から人間に感染するリスクもあることが大きな問題となっています。

日本国内では特に西日本を中心にSFTSの発生が報告されていましたが、2021年から現在まで浜松市で20頭は確認されており、浜松市にSFTSがいることは間違いありません。近年は分布が関東へ拡大傾向にあり、全国どこでも注意が必要な感染症となっています。

猫の致死率約60%と高い点が特徴です。猫にとっても命に関わる病気であり、早期発見・早期治療が求められます。このウイルスは犬にも感染し致死率約40%といわれています。人間にも感染し、重症化すると命にかかわることもあり致死率約30%といわれています。

猫のマダニ感染症(SFTS)の症状

猫がSFTSに感染した場合、以下のような症状が現れることがあります。

  • 発熱
  • 元気消失
  • 食欲不振
  • 嘔吐、下痢
  • 黄疸-皮膚や白目が黄色くなる
  • 出血傾向-鼻出血、血便、歯茎からの出血など
  • リンパ節の腫れ

感染してから症状が出るまでの潜伏期間は、マダニに咬まれてから6日から14日程度です。
進行が速い場合が多く、数日以内に重篤化し、死亡に至ることも少なくありません。

また、SFTSウイルスに感染した猫は、咬傷や唾液、血液、排泄物を通じて人にウイルスを感染させる可能性があるため、感染猫に接する際は非常に注意が必要です。

猫のマダニ感染症(SFTS)の原因

猫のSFTSの主な原因は、感染したマダニに咬まれることです。
マダニは草むらや藪、森林などに生息しており、特に春(3月)から秋にかけて活発になります。しかし、温暖化の影響で、冬でもマダニに咬まれるリスクはあります。

また、猫自身が外に出ない「完全室内飼い」であっても、人間の衣服やペットに付着して室内にマダニが持ち込まれるケースもあります。
さらに、感染猫との接触でもウイルス感染が成立するため、感染経路は一つではありません。

【補足】マダニとは

マダニとは、節足動物門クモ綱ダニ目に属する寄生虫の一種で、動物や人間の血液を吸うことで生きています。
見た目は数ミリ程度の小さな生物ですが、感染症を媒介するため、非常に危険な存在です。

猫のマダニ感染症(SFTS)の診断

猫にマダニの咬傷跡があり、上記のような症状が見られる場合、速やかに動物病院を受診することが必要です。

診断には以下の方法が用いられます。

  • 血液検査
    血小板の減少、白血球数の減少、肝臓酵素の上昇など、SFTS特有の血液異常をチェックします。
  • ウイルス検査(PCR検査)
    SFTSウイルスの遺伝子を検出する検査です。確定診断にはこのPCR検査が必須となります。
  • 病歴聴取
    マダニ駆除薬の予防歴、外出歴、草むらへの立ち寄り、マダニ咬傷歴の有無、発熱や出血症状などを総合的に確認します。

診断には時間がかかる場合もありますが、重症化を防ぐためには症状が疑われる段階で迅速に治療を開始することが重要になります。

猫のマダニ感染症(SFTS)の治療

現時点では、猫に対するSFTSの特効薬(ウイルスに直接効く薬)は存在していません。そのため、猫の治療では対症療法(症状を和らげる治療)が中心となります。

一方で、ヒト医療においては、抗ウイルス薬「アビガン(一般名:ファビピラビル)」がSFTSの治療薬として承認されております。ただし、現段階では動物(猫)における使用については承認されておらず、標準治療とはなっていません

猫に対して行われる主な治療内容は以下の通りです。

  • 点滴療法
    脱水や循環不全を防ぎ、体力の回復を支えます。
  • 抗生物質投与
    ウイルスによる免疫低下により起こりやすい二次感染(細菌感染)を防ぎます。
  • 止血剤の使用
    出血症状に対処します。
  • 症状に応じた支持療法
    嘔吐止め、肝保護剤、免疫抑制剤など、個々の症状に合わせた治療を行います。

重症化すると命に関わるため、早期発見・早期治療が生存率を高める鍵となります。
また、SFTSに感染した猫の看護には、人間側も感染予防(手袋・マスク・消毒)の徹底が必要です。

まとめ:マダニ予防薬の使用が何よりも重要です

SFTSは非常に怖い病気ですが、マダニの予防薬で感染を防御できます。
以下の対策をぜひ実践してください。

  • マダニ予防薬の定期使用(滴下薬、経口薬)
  • 外出時の草むらや藪への立ち入りを避ける
  • 外から帰ったら、体表をしっかりチェックする
  • 猫同士の接触をできるだけ減らす
  • 飼い主様自身も長袖・長ズボン・虫除けスプレーを活用する

けんご動物クリニックでは、猫のマダニの予防・治療を行っております。
「最近外に出た」「体調が悪そう」「もしかしてマダニかも?」と気になることがあれば、お早めにご相談ください。
大切な家族を守るために、日頃からの予防と早期対応が何よりも大切です。

また、当院ホームページ内の、予防ワクチン・健康診断もあわせてご覧ください。

診療時間・WEB予約

診療時間
日/祝
10:00〜13:00
16:00〜19:30

【受付時間】受付は診察終了時間の30分前までにお願いします。