腫瘍科

リンパ腫は体の様々な部位で発生します。部位により症状は異なり、反応や経過も異なります。
犬のリンパ腫の8割ほどは「多中心型」と言われる複数のリンパ節が腫れるタイプのものです。進行することで内臓や骨髄に入り込み、機能低下に至ります。
無治療の場合、平均余命は1～2か月と言われています。リンパ腫は抗がん剤に反応しやすい腫瘍のため、多中心型の場合には8割ほどの症例で治療に反応が見込めると考えられます。抗がん剤治療を行うことで、1年生存率は50％、2年生存率は20％と考えられています。

乳腺腫瘍は雌犬の腫瘍で最も多く、10歳ほどの高齢犬で見られやすいです。避妊手術をしていない場合は、25%ほどの確率で発症すると考えられています。一方で初回発情前に避妊手術をすることで発生率は0.05%と大幅に低下するため、早期の避妊手術を行うことで予防が期待できます。
乳腺腫瘍は、良性と悪性の割合はほぼ7：3で　診断は視診と触診、血液検査および血液化学検査、腹部エコー検査です。胸部X線検査あるいはCTが肺転移の有無を確認するために実施されます。一般的に、乳腺腫瘍に対して推奨される治療は、外科的切除です。化学療法の必要性は、腫瘍のタイプや病理組織学的検査所見により決定されます。

メラノーマ（悪性黒色腫）は口腔内にできやすく悪性度が高く、さらに肺に転移しやすい性質をもっている悪性腫瘍です。黒色をした悪性メラノーマがほとんどですが良性メラノーマもあり、また無色素性悪性黒色腫もあるため、病理検査が確定診断には必要になります。口腔内が多いですが、皮膚、足先にもできやすく増殖は速いです。診断は視診と触診、血液検査および血液化学検査、腹部エコー検査です。胸部X線検査により肺転移の有無を確認するために実施されます。お話の上、積極的治療法や緩和療法を行っていきます。
現在のステージにもよりますが当院で、数頭、発症後３年以上元気で普通に暮らしているわんちゃんがいます。

リンパ腫は8〜10歳ほどの高齢の猫での発生が見られやすいですが、若齢でも猫白血病ウイルスに感染していると発生します。
消化器型、 鼻腔内、 胸郭の中にできる縦郭型など様々で症状も異なります。抗がん剤にはよく反応しますが、猫白血病ウイルスに感染している場合には残念ながら効果は乏しく、余命は短いと考えられています。

猫の乳腺腫瘍は、腫瘍の中では3番目に多く見られます。避妊手術を生後6か月齢までに行なった場合には91%、1歳までに行なった場合は86%、乳腺腫瘍の発症リスクを軽減できると考えられています。
犬では乳腺腫瘍は良性が7割を占めますが、猫の場合には、およそ9割が悪性と言われておりリンパ節や肺への転移も多く見られます。
悪性である確率が高いため、早期の避妊手術で予防することや早期の発見、治療が大切です。