犬の熱中症（熱射病）とは？

浜松市中央区のけんご動物クリニックです。

今回は、犬の熱中症（熱射病）についてご紹介します。

暑い夏になると、犬の「熱中症（熱射病）」が増加します。特に日本の夏は高温多湿のため、犬にとっては非常に過酷な環境です。急な炎天下は命にかかわる危険な状態になることもあるため、予防と早期発見が重要です。

ただ、夏に犬が体調を崩すと「熱中症！」と思われたりしますが、必ずしも熱中症であるとも限りませんので、見極めは大切です。

けんご動物クリニックでは、熱中症（熱射病）の治療を行っておりますので、お悩みの場合は一度ご相談ください。

犬の熱中症（熱射病）とは

熱中症（熱射病）とは、体温が過度に上昇することによって、体のさまざまな臓器に障害が起こる状態を指します。
犬は人間のように汗をかいて体温を下げることができず、主にパンティング（ハァハァという呼吸）で熱を逃がしています。しかし、気温や湿度が高すぎると体温を効率よく下げられず、体に熱がこもってしまいます。

獣医学的には、体温が40℃以上に上昇し、体温調節中枢が破綻することで、血液循環が低下、微小血栓が形成され、脳、肝臓、腎臓、消化管、筋肉など多臓器障害が生じる危険な状態になることを指します。放置すれば高体温・低酸素・血栓形成により短時間で命にかかわってくる病気です。

犬の熱中症（熱射病）の症状

熱中症（熱射病）の初期症状には以下のようなものがあります。

• 激しいパンティング（呼吸が荒い）
• よだれが大量に出る
• 体が熱くなる（特に耳、口の中）
• 歩き方がふらつく、元気がなくなる
• 嘔吐、下痢
• 舌や歯茎が赤くなる

症状が進行すると…

• 舌や歯茎が紫色
• 意識が朦朧とする、倒れる
• 痙攣（けいれん）を起こす
• 血便、血尿
• 意識がなくなる（昏睡）

これらの症状が見られた場合は、一刻も早く動物病院に連れて行く必要があります。

犬の熱中症（熱射病）の原因

主な原因は以下のような環境要因です。

◎ 高温多湿の場所での放置

• 夏の昼間に散歩をする
• エアコンのない室内や車内に置き去りにする（特に閉め切った夏の車内は、数分程度で50℃以上になります）

◎ 犬種や年齢によるリスク

• 短頭種（フレンチブルドッグ、パグ、シーズーなど）は特にパンティングが苦手で危険
• 高齢犬、子犬、肥満犬も体温調節が苦手でリスクが高い

◎ 激しい運動や興奮

• 炎天下でのボール遊びやランニング
• 緊張や不安で体温が上がる場合もある

犬の熱中症（熱射病）の診断

動物病院では、必要に応じて以下のような検査が行われます。

• 体温測定（40℃以上）
• 身体検査：粘膜の色、脱水状態、呼吸や脈拍の状態など
• 血液検査：臓器障害の有無（肝酵素、腎機能、電解質、血糖値など）
• 凝固系の評価：熱射病によって血液が固まりにくくなるDIC（播種性血管内凝固）に進行する可能性があるため

熱中症（熱射病）は見た目だけでは軽く見えることもあり、注意が必要です。また、逆に夏に体調が悪くなる=熱中症と思いこんでしまうこともあり獣医師による詳しい検査が必要です。

犬の熱中症（熱射病）の治療

熱中症（熱射病）をおこしてしまったら早急な対応が必要です。軽症～重症までありますが治療を行うことで回復する可能性も高まります。

【自宅での応急処置（動物病院に行くまで）】

• 常温の水を体にかける
• 濡れタオルや水道水で体を冷やす（特に首、わきの下、腹部など）
• 扇風機や冷房を使って体温を下げる
• 無理に水を飲ませない（意識がない場合は特に危険）-誤嚥させないために
• 冷却はあくまで応急処置。すぐ病院へ！

　以下の治療を必要に応じて行っていきます。

【病院での本格的な治療】

• 入院による静脈点滴治療（脱水、ショック、脳浮腫、腎障害、凝固障害などへの対応）
• 体温管理（過度な冷却で低体温にならないよう慎重に）
• 酸素吸入
• 抗炎症薬や抗けいれん薬の投与
• 血液検査による経過観察

臓器障害が進行している場合には、入院による集中治療が必要になることもあります。

飼い主様に伝えたいこと（予防が最重要）

熱中症（熱射病）は予防が最も大切です。以下の点を守ることで、多くのケースは防げます。

◎ 散歩-暑い時間帯の散歩を避ける

• 朝や夜の涼しい時間帯を選ぶ
• アスファルトが熱くなっているかどうか、手のひらで確かめてみる
• ※散歩中に人が暑さを感じる外の気温32℃の時には、犬は地面から近いため36℃以上に感じます

◎ 室内-エアコンを使用し、室温を管理

• 留守番中もエアコンを切らない
• 室温は22～26℃、湿度は40〜60％が目安

◎ 屋外-直射日光を避け、風通しのよい場所に

• 暑いと思って直接水をかけた場合には自然乾燥すると急性に皮膚炎が出るので、必ず身体を拭いてドライヤーで乾かす。

◎ 車内-放置を避ける

• 猛暑では5分でも命にかかわります。

◎ 外遊び-直射日光を避け、風通しのよい場所に

• 川遊びやプールや水遊びした場合には、その後濡れたまま自然乾燥せずに身体を拭いてドライヤーで必ず乾かす（急性に皮膚炎がでるため）

☆水分補給を忘れずに

• 新鮮な水を常に用意する
• 外出時は携帯用の水入れを持ち歩く

まとめ

熱中症（熱射病）は、命を脅かす緊急疾患です。
症状が出る前に予防すること、万が一の場合はすぐに病院で処置を受けることが大切です。

けんご動物クリニックでは、犬の熱中症（熱射病）の治療を行っておりますので、お悩みやご不安がある場合はお気軽にご相談ください。早めの対応で大切なご家族を守りましょう。

また、当院ホームページ内の健康診断もあわせてご覧ください。